オーガニック

Organic 2006

Living in the shadow
バグダッド市内を歩いてみると、そこはまだ外出禁止令が実施中であるかのように静かだ。道路を行き交う車も少なく、多くの店も閉鎖されている。内戦が治まらないイラクで人々は今までにないほど将来に不安を感じている。事態が悪化する中、イラク政府とアメリカ軍が今の状況を改善できると信じている人は少ない。
オープンしている数少ない店のひとつ、バグダッドの東で薬局を営むサヌアさんは「まだマーケーットも学校も何も正常に戻ってはいない」と語る。そして何よりも「誰も安全だとは感じていない」ともいう。人々は群集を避けて買物に出る。彼女の薬局にも予備の薬を求めて客がやってくる。またいつ外出禁止令が実施されるかわからないからだ。
あるビジネスマンは現在も休業中だという。人々は家から出ることを恐れ、オフィスに働きに出かけることさえできない。バグダッドの学校もほとんどが閉じられたままだ。多くの学生や教師はすでに国を去った。イラクに残っている学生たちも状況が好転するまで学校へは行かせてもらえない。
大学教授のサリナさんは外出禁止令が解除された後に学校に行ってみたところ、600人いる生徒のうち大学に来たのはわずか10人だったという。そしてその大学も今は閉鎖された。彼女もまた国を出ることを考えてしまうという。
国連の調査によれば毎月10万人のイラク人が隣国のシリアやヨルダンに逃れている。できることならイラクを離れたくないと語るサリナさん。暗闇の中でも彼女の心の中にはわずかながら希望の炎が残っている。しかし、その炎も日々薄れてゆくという。
5 Dec 2006