オーガニック

Organic 2007

No-Impact Man
そこは風通しのよいロゥワー・マンハッタンの一角。ドアマンもいれば一見どこにでもあるようなアパートの9階を住居にするコリン・ビーヴァーさんの暮らしぶりは一風変わっている。
部屋は少し暗く、ライトはない。そしてあの耳障りな音を出す冷蔵庫もなければ、テレビやエアコンもない。唯一、ニュースを聞くためのラジオとラップトップ・コンピューターの電力は屋上に設置したソーラーパネルから供給されている。
バスルームに足を踏み入れると、トイレットペーパーやシャンプーボトルもないのに気付くだろう。キッチン・カウンターの上には果物とチーズ、ダイニンク・テーブルにはキャンドルが置いてあるだけである。
そんな変わった家に妻と幼い娘と3人で暮す43才のコリンさんは自ら罪ある自由主義者と称し「No-Impact Man」というブログを立てている。彼のアイデアは環境に悪影響を及ぼすものを減らし、環境に良い事を増やすと言ったシンプルなことだ。それは都市生活からすべての物を取り払うことではなく、継続実行可能なことから取り組むことであった。
最初の年はゴミを減らすことからはじまり、一家は買物かごをもってショッピングに出かけ、中古品を買い、コーヒーやジュースをテイクアウトするときにも捨てられていたカップやジャーをリサイクルした。食料はユニオン・スクエア・マーケットで購入し包装紙無しに買物かごで持ち帰る。
そして彼らは二酸化炭素を排出する乗り物に乗るのを止め、徒歩、または自転車を使用するようになった。家にある家電製品の使用も止め、今では一日の水使用量をアメリカ人の平均340リットルから25リットルに減らそうと努力している。
「私はかつて買物を沢山し、いつも容器に入った食事をし、どこへ行くにもタクシーを利用する典型的なアメリカ人だった」と語るのはコリンさんの妻であり、週間ビジネスマガジンのジャーナリストでもあるミッシェルさん。一時は生活様式を変えたことを後悔したこともあったという彼女は「それも大切な大人の冒険のひとつだった」という。
コリンさんはキッチンから木箱を取り出し、中の茶色いものを手ですくってみせた。ふたを開けたとたん何か懐かしい匂いのするものは堆肥であった。それは果物や野菜の皮とミミズのコンビネーション。正に地球上の土はミミズが作り出していることを実感できる。
彼はトイレットペーパーを使用しない理由につて「トイレットペーパーを使わないところは世界中いたる所にある」「それは洗うことによってより衛生的である」という。
彼らはその生活様式を他の人たちに強要するつもりはない。ただ自分達で考えだしたその生活様式に満足していることは確かである。この実験が終っても小さな冷蔵庫と洗濯機を除いては生活様式を逆戻りさせることはないという。
洗濯物を手で洗うことは一番辛かったというミッシェルさん。そのかわり娘のイザベラちゃんは浴槽の中で服を踏みつける楽しみがなくなってしまうと嘆くだろう。
19 Sep 2007