オーガニック

Organic 2008

Sounds of hope
悪臭が漂う灼熱の太陽の下、ゴミの山からリサイクル品や食料を探し歩いている親や子どもたち。そこへ突如、ヘンデル組曲「王宮の花火」の音楽がゴミ収集車の雑音を打ち消した。
そこは1日平均200トンのゴミを収集しているパラグアイの首都アスンシオンのゴミ捨場(Cateura)。そしてパラグアイの有名な指揮者のルイス・サラン(Luis Szaran)氏が貧しい子供たちのために音楽学校を設立したところでもある。
「私が始めてここを訪れたとき、片手に乳飲み子を抱えながらゴミを拾っている母親を見かけました」「それがすべての始まりです」と語るのはハンガリーとポーランドの血を受け継ぐサラン氏。
6年前、彼はスイスの非政府組織「Avina」のサポートを受けて、この地に貧しい子供たちのためのクラシックとフォークの音楽学校「Sonidos de la Tierra」(地球の音)設立に着手した。今では人口650万人の3分の1は1日2ドル以下で生活しているといわれるパラグアイの120の自治体から8千人の生徒を育成している。
「音楽が私の生活を変えた」「今はまったくに異なっているように感じる」と語るのはバイオリン奏者マリアちゃん11才。彼女は学校で学ぶ65人の生徒の一人。「以前はいつも意気消沈しているように感じたものだった」「でも今は希望を持っている」と彼女はいう。
「Sonidos de la Tierra」の生徒たちは今年オックスフォード大学で演奏した。有能な子供たちは奨学金を受けて音楽キャリアをのばすことができる。それはベルリン交響楽団のようなオーケストラ・メンバーに教授されることも可能にする。もし学校がなかったら、今ごろ彼らはゴミ捨場をうろうろしながらゴミをかきあさっていたであろう。
音楽学校の授業は演奏だけではない。パラグアイの伝統的な木製弦楽器(アルパ)を作ったり、修理することも学ぶ。楽器が売れたり修繕したときに彼らは収入を得られる。腐敗政治の著しいパラグアイでサラン氏は「我々は変化が訪れるまで、子供たちに手をさしのベ続ける」と語る。
24 May 2008