オーガニック

Organic 2008

Picturing life with HIV
イギリスのフォトジャーナリスト、ネル・フリーマンさんにとってそれは大きな試みであった。コンゴ民主共和国で彼女は1ヶ月間自分の仕事を犠牲にして12人のHIV感染者をプロのフォトグラファーに仕立て上げたのである。
孤児院で働く者やピーナッツ売り、炭坑労働者など国中から集まった参加者の誰もがデジタルカメラを見たこともなく、コンピュータを使える人も2人しかいなかった。しかし4週間後、新たなスキルを身につけた彼女たちはプロのフォトグラファーとしてそれぞれの町へ戻っていった。
その活動は2001年にキンシャサの女性人権組織FFP(Fondation Femme Plus)のディレクター、ママン・ベルナデットさんのアイデアで始まった。そのとき彼女はクリスチャン・エイド(Christian Aid)の支援を受けて15人のHIV感染者をフォト・ワークショップに参加させた。当時の写真は今もFFPのクリニックに飾られているが、それらの時代は異なっている。
彼女たちはフィルムカメラを使っていたため、その経費は重い負担であった。そして何よりも当時コンゴ民主共和国には抗レトロウイルス薬(ARV)がなく、多くの参加者はHIV感染によって亡くなっている。しかし、時代は変わりARVはNGO運営のクリニックなどで入手できるようになり、デジタルカメラはフォトグラファーの経費も引き下げた。そしてベルナデットさんは再び2001年のアイデアに着手したのである。
ネルと12人の訓練生の日々は午前の撮影と午後のコンピュータ授業に振り分けられた。それぞれラップトップコンピュータとデジタルカメラを支給された彼女らは自ら習得するだけでなく、他の人にも教えられるようにならなければならない。
最初はマウスの使い方も分からなかった訓練生たちも4週間後には写真をコンピュータに取り込み、それをフォトショップを使って編集し、さらにプリンターで出力するためにUSBスティックに保存できるようになった。
撮影には動物園や公園、ストリート・マーケットに出かけて、人がどのように感じるか意識して取り組んだ。そして最終プロジェックトの結婚式では、その一瞬を見逃さない重要性を論じ合い、彼女らはいくつかの素晴らしい写真を残したのである。
ワークショップ終了後、彼女たちの展覧会が行われ、国内で大きな反響を呼んだ。それまで物売りをしていたある女性は現在それを副業にしてフォトグラファーとして活動しているという。
30 Nov 2008