オーガニック

Organic 2009

Berlin recreats history
ベルリンを訪れる観光客が時たま地元の人に「ベルリンの壁はどこにあるのですか?」と尋ねることがある。そして彼らは市内のフリードリッヒスハイン-クロイツベルク地区にある1.3kmに及ぶオープン・エア・ギャラリー「East Side Gallery」を訪れるのである。
ベルリンの壁が崩壊して20年、街には破壊され落書きされた壁があちこちに点在する。そんな中、「イースト・サイド・ギャラリー」の壁はアーティストが新たにペインティングできように落書きが削り落とされ、きれいに洗われている。それはベルリンの上院で先に可決された250万ユーロの修復プロジェクトのひとつである。
「イースト・サイド・ギャラリー」は世界で最も大きいオープン・エア・ギャラリーとして知られ、残されている壁も最も長い。1989年11月に壁が崩壊した後、118人のアーティストが招待され、21の異なる国から来たアーティストたちはそれぞれの思いを壁にペイントした。しかし、20年間雨ざらしにされた壁画は落書きや腐敗などで汚れたまま放置されていた。
この歴史的な記念碑を修復しようと立ち上がったのはイラン出身のドイツのアーティスト、Kani Alaviさん。資金供給に数年を費やしたこの修復計画を彼は次世代のために必要不可欠なプロジェクトであると断言する。「20年前に壁が崩壊したときの陶酔感、それをアーティストたちがどのように形に残したのか、それを今の人々に感じてもらうためにもすべてのペイントが再現される必要がある」と語るAlaviさん。
しかし、オリジナル・ペインティングが削り落とされたとして憤慨するアーティストもいる。当時のソビエトのブレジネフ書記長と東ドイツの共産主義のリーダー、ホーネッカー氏がキスし合っている有名な絵を描いたロシアのアーティスト、Dmitri Vrubel(ドミトリ・ ヴルーベリ)氏である。それでもギャラリー側は彼が6月に戻って来て新しい壁にペイントし直してくれることを願っている。
大規模な修復作業にもかかわらず観光客の足が途絶えないベルリン。今年秋に向かえるベルリンの壁崩壊20周年記念に向けて「イースト・サイド・ギャラリー」は一新される。
21 Apr 2009