オーガニック

Organic 2010

Gazan surfers
イスラエルに事実上封鎖されているガザ地区。そんなガザのビーチには澄み渡った空の下でもロマンティックな風景はない。
ゴミくずの中でフットボールをする子供達。彼らの背景にはイスラエル軍に破壊された建物がありのままの姿で残されている。そのガザのビーチにウェットスーツに身を包んだ若者たちがいる。それがガザのサーファーたちだ。
「生活が困難なガザでサーフィンをしていると自由になった気持ちになる」と語るのは一見公衆トイレのような小屋にあるガザ・サーフ・クラブのメンバー。「パレスチナ人も他の国の人々と同じようにスポーツが好きでサーフィンもする」「でも、メディアは我々のことをテロリストとか悪い人間としてしか報道しない」と言うのは40人のメンバーを抱えるクラブ代表のアブ・ジャイブ氏。
ガザ周辺の海は決してサーフィンに適しているとは言えない。毎日6千万リットルもの汚染された下水が流れ込むその海でサーフィンを楽しむのは容易ではなく、彼らは日を選び、比較的水のきれいな場所を選んでサーフする。多くのサーファーたちは20代から30代で、ほとんどは失業者であるが、失業率が40%を超えるガザ地区では珍しくない。
サーファーたちのレベルは様々でボードの上で立ち上がるのに苦労している者もいれば、2m近くの波を軽く乗り切る者までいる。そんな中で最長老として慕われているのが89才の通称「ドク」と呼ばれるドリアン・パスコウィッツさん。ユダヤ人の彼はサーフィン歴70年というベテラン・ライダーだ。
数年前、当時カリフォルニアに住んでいたパスコウィッツさんは「ロサンゼルス・タイムズ」に載っていたある記事と写真を見た。それは2人のアラブ人がガザでサーフィンをしている写真で、彼らのサーフボードはひどくボロボロであったという。そして彼は2007年に15本のサーフボードを持ってガザにやって来たのである。
そのとき、ガザ北部にあるイスラエルのエレツ(Erez)検問所で境界線を越えることを許されなかったパスコウィッツさんはイスラエルの軍人にこう答えたと言う。「私はこれらのボードを届けるために地球を半周して来た」「これらを必要としている人たちは目と鼻の先にいるんだ」「それでもこの老いたユダヤ人に恥をかかせるつもりかい?」「それとも彼らに境界線を越えてここまで取りに来てもらうかい?」
22 Apr 2010